『真珠』(ゲットーランウジュマク)
異郷の河
ガラスの酒瓶に 墨汁を垂らしたように・・・・・・・・
不毛の大地をゆく
それは真珠
いのちからがら 逃げてきた少年
彼にとって いま 真珠にひとしい
真珠
喉を潤す 純白の結晶・・・・・・・・・こころなしか紅が効いた・・・
それは氷のそれのように 喉のおんどに溶ける
少年を潤し 元気づける
紅(くれない)の河
望郷の河
運命が音を立てて 姿をあらわす
場末のオーケストラのように騒がしく・・・・・
それは真珠
武器はどこか たたかわねば
いま 少年にとって 逆境は真珠にひとしい
真珠
いま あやしい光を放つ・・・・・・・・・・・・・
少年はきっと ?みとれるだろう 真珠の結晶
それは 少年の勇気に彩りを添える
青天の河
霹靂の河
出会うとは思っていなかった友に出会う こんなところで こんなときに
友は言う・・・これは食物にあらず まったく熱に溶けず ミルクにならず 栄養とならす 赤子 老人 幾人も死す・・・・・・・・
・・・・・・
それは真珠
少年は 無知な友人に売り渡した 紅の真珠を
やがて それは炎熱に溶け ミルクになると 告げて
ここは世界でもっとも太陽に近い大地
慣れない少年は 炎熱に負け ことの大事を忘れてしまった
わずかなあぶく銭の誘惑にも負け 友を欺いた
友の村は困っていた ・・・近頃の酷暑は 平素にあらず 赤子も老人も 幾人も死すと
アイロンの河
鋼鉄の河
運命は 少年に裁きを言い渡した
みっともない声をあげて 河に飛び込む少年
---――――――ヤヤ 卑怯なり 追いかける友人 そして 追っ手
少年は頭から、水に飛び込んだ・・・と思った しかし 砕ける頭蓋骨
骸と化した少年は 西に向かって流れていく
友人は 涙を流して 見送った
そして 追っ手に問う この河 いかなる名前か
追っ手 答える アイロンの河
なんと言い得て妙か
真珠のあやしい皮肉めいたひかり それは黄金や銀のまっすぐなひかりにあらず
何処か ひとを侮った しかし 甘い香りのするひかりか
男たちは いつまでも河の流れを見送ったという