>Date: Fri, 07 Sep 2007 22:35:46 +0900 (JST)

井戸

 闇の世界にぼんやりと

まるで 世界がそこにしか存在しないかのように

おあつらえむきの煉瓦を重ねて つくられた そおっと

 中を見るのがこわい

ほんとうに水があるのだろうか・・・・・・・・・・

 女は それを発見したとき そう思った つらつらと

しかし のどが吸い付いて 固まってしまうほど 水がのみたい

 女は ひきつれる着物を 破れるままに 井戸に飛びついた

しかるのちに 桶を引き上げる

ギィコン・・・  ギィコン・・・ ギィコン・・・

その音 まるで女の罪を告げているようだった

「ぁ・・・」 女は思わず声をあげた

その水は すくなくとも 女が渇望した水は 真っ赤に染め上がっていた

しかし のどの乾きを我慢することはできなかった

 うく・・・・うく・・・・うく・・・・・・

赤い水は 女の口の端から 流れ落ちる

まるで 女じしんが血を流しているように

うげぇ・・・・・・

女は あんなに飲みたかった水を吐いてしまった

それは水ではなかった 真っ赤に染め上がっていたわけではなかった

ひ・・・・・

女の記憶に 罪の影像が浮かび上がる

 それは 腹を痛めた我が子の首を絞めた

まだ、いっかいしか 呼吸していなかったのに・・・

あ似てる・・・ その水からは、何処か親しげな味がした

  親しい間柄においては、血の味も似るという

女は声を上げた 女の村は貧しく 空腹のさいには みずからの血を飲むという ならわしがあった

 ここは井戸

 しかし ただの井戸ではない あなたを映す鏡

中を見てごらん きっと あなたが映っている

 あなたは中を見る勇気 がありますか

その水を飲むことができますか?

 美味なのか 不美味なのか

それはあなたしだい

 井戸は言っている こごおん こごおん こごおん・・・・


indexへ

詩集へ

inserted by FC2 system